10月の空模様-洋の生地に、和の香りを – 海外生活から生まれたカジュアル着物の素材選び。

「洋の生地に、和の香りを」こんなのアリ?素材について考えてみた
みなさん、こんにちは。
KIMONO MODERN クリエイティブディレクター、代表のゆきです。
先週、京都に行ってきたのですが、まあ暑かった。
先日発表したスーツ着物にブーツを合わせて、秋のコーデで張り切って出かけたのに、ぐったり笑
それでも朝晩の風には、少しずつ秋の気配。
みなさん、贅沢な「着物時間」、楽しんでらっしゃいますか?
さて、今月の空模様。
テーマは「素材」です。
「ワンピースときどき、きもの」。
着物が普段着になりますように、という KIMONO MODERN のコンセプトです。
今日はワンピース、明日は着物。
そんなふうに、着物が日常のワードローブの一部になればいいな、と思っていて。
KIMONO MODERN はそれを、素材や色柄の側から実現しようとしてきました。
レース刺繍の生地、デニム、いろんな素材の着物を発表してきたのも、そのためです。
今月も、先月に続いて「スーツ着物strategy」の新色、そして秋冬の定番コーデュロイ着物の新色が仲間入りしています。
で、改めて考えてみたんです。
私はなぜ、こんなに素材にこだわるんだろう、って。
鬼の形相とベンジンの夜
そもそも。
原点をたどると、子どもの頃の記憶に行き着きます。
日本舞踊をしていた母は、着物で出かけることの多い人でした。
食事先でお醤油をこぼしてしまった夜なんて、帰ってくるなりベンジンを手に、鬼の形相でトントン叩いて染み抜き。
・・・・子どもながらに「着物って不便だなぁ」と思って見ていたのを覚えています。
洗えないから、ときどき「洗い張り」もしていました。
一度仕立てをほどいて布に戻してから洗い、また仕立て直す。
手間もお金もかかる、大仕事です。
洗えたらいいのに、着物。
その思いは、ずっと私の中にありました。

カリフォルニアの乾燥機と、生地屋めぐり。
その思いが確信に変わったのは、アメリカでの暮らしでした。
外に洗濯物は干せないし、乾燥機が当たり前。
気候も暑い。
着物は正絹が基本だから手洗いもできないし、(今でこそ洗える正絹もいろいろあるけれど)当時は「洗える着物」なんてほとんどなかった。
洗える素材じゃないと、日常には着られない。
そう痛感して、いろんな生地屋さんを巡りました。
ポリエステルだったり、綿だったり。
着物に仕立てても遜色ないものを見つけては、ちょこちょこ作って、ブログで発表して。2004年、カリフォルニアで KIMONO MODERN が生まれた頃の話です。

そう。
その頃、ひとつだけすごく気をつけていたことがあって。
洋の生地なのに、和の香りがするかどうか。
洋の中に、和を感じられるもの。
そういう生地ばかり探していた気がします。
KIMONO MODERN の着物は、洋にはしゃぎすぎていない。下手に「洋」を取り入れていない。
そこに気づいてくださった方、いらっしゃるかな。

たぶん、10年近く海外にいた分、日本が恋しかったんだと思うんですよね。
郷愁、というのかな。
「あ、ちょっと和っぽい」「この色彩、なんか日本っぽいよね」に、ものすごく敏感だった。それは今も変わらなくて、取り入れるモチーフも奇抜なものではなく、伝統的なものを少しだけモダンにする。そこは、今でもとても気をつけています(そもそもが本道からズレてるくせに、邪道にすごく敏感なわたし笑)

イタリアの高級ウールか、日本の技術か
とはいえ。
50年前、100年前と比べたら、素材の技術は本当に進化しています。
昔はチクチクしたモスリンやウールも、今は柔らかな手触りに。
シワになりにくさ、乾きやすさ、毛玉のできにくさ。
天然素材の通気性や着心地はもちろん素晴らしいけれど、先人たちが培ってきた日本の繊維技術を着物に取り入れてもいいんじゃないか、とも思っていて。
だからこその、スーツ着物strategy。
実は、めっちゃ迷いました笑
高級イタリアスーツ素材にするか、天然ウール100%にするか。
何度も行ったり来たりして、最後に選んだのは、日本の繊維に関わる人たちの技術の結晶でした。
スーツ着物を着たい朝。
さあ着ようと思ったら、シワ。アイロンかけなきゃ・・・・
電車や車で移動していたら、座りジワがくっきり。せっかくの晴れ舞台なのに。
そんながっかりを、なくしたかったんです。

で、冒頭の京都出張。
実はこのスーツ着物で出かけてみました。
長時間の新幹線に乗って、ガシガシ歩いて、バスで移動して、メーカーさんの工場を訪問して。
座ったり歩いたり、たくさんしたのに。
ホテルで脱いだら、シワひとつなし。これにはびっくり!
次の日もノーアイロンで、気持ちよく袖を通せました。

コーデュロイも、ワンピースの延長線上に
今月は、秋冬の定番コーデュロイ着物にも新色が仲間入りしました。
コーデュロイって、着物の世界では比較的新しい素材。
「着物にコーデュロイ?」と思われる方も、まだいるかもしれません笑
でも私の中では、ごく自然な選択でした。
秋になったら、コーデュロイのワンピースやジャケットを出してくる。
その延長線上に、コーデュロイの着物があってもいいんじゃないか、って。
ふっくらした畝の手触り、秋冬らしい温かみのある表情。
そこに着物の衿合わせと帯が加わると、ちゃんと「和」になる。
これも、洋の生地に和の香りを探してきた、私なりの答えのひとつです。

見えないストーリーを、着物に。
自然素材と、それを育てる生産者さんの思いを紡いでいくこと。
先人たちが開発してきた技術を、大切に受け継いでいくこと。
どちらにも、職人の魂がこもっていると思っています。
だから KIMONO MODERN が大事にしているのは、ちゃんと和の香りがするかどうか。
それは柄だったり、素材の工程だったりするのだけど。
そういう見えないストーリーも商品づくりに吹き込んで、形にしていきたいと思っています。
素材や色柄から、「ワンピースときどき、きもの」を目指してきた22年。
でも実は今、まったく違う方向からのアプローチも考えているんです。
・・・・まだ内緒。
(もうちょっと待っててね!)
素材とは別の扉から、着物をもっと日常に。
これからの KIMONO MODERN も、楽しみにしていてもらえたら嬉しいです。
今日はワンピース、明日は着物。
まずはこの秋、スーツ着物とコーデュロイ着物で、一緒に楽しみましょう。
▶ スーツ着物strategy(新色)はこちら
▶ コーデュロイ着物(新色)はこちら
▶ 先月の空模様もあわせてどうぞ
「9月の空模様-女の戦闘服という名の、スーツ着物-STRATEGY-静かなる武装」
Threadsでは、京都の工場訪問のこぼれ話なども少しずつ綴っています。よかったらのぞいてみてくださいね。










