着物を仕事にするということ<教えて!たなえり先生#80>

こんにちは、たなえりです。

「着物の仕事をしています」
とお話しすると「もともと着物の世界の方なんですか?」と聞かれることがあります。

けれど実は、最初から着物を仕事にしていたわけではありません。30代前半までは派遣社員として働きながら、時々着物を楽しむという、ごく普通の生活でした。特別な家に生まれたわけでもなく、着物の家系でもない。ただ、子どもの頃から着物が身近にあり、気がつけば長く付き合っていた——そんな存在でした。

では、どうして着物が仕事になったのか。そして、なぜ着物の仕事を選んだのか。

今回は、私と着物、そして仕事について少しお話ししてみたいと思います。

身近にあった着物

幼い頃から、私の身近にはいつも着物がありました。

親族の結婚式やお正月など、特別な行事のときには自然と着物を着る機会があり、小学校高学年からは茶道を習い始めたこともあって、その頻度はさらに増えていきました。10代の頃には、年に4〜5回ほど母に着物を着せてもらっていた記憶があります。

20代になると、結婚を機にあらためて自装を習い始めました。
それからは夏にゆかたを着たり、友人の結婚式に着物で参列したり、時々のおでかけに着物を選んだりと、無理のない形で着物を楽しんでいました。

当時は派遣社員として働いており、その生活も気づけば10年近く。30歳が近づくにつれて、契約更新や転職のことが少しずつ気になり始めていました。

「次に転職するなら、一生続けられる仕事にしたい」

そんな思いを持つようになったのも、この頃からでした。

今でも大切に着ているボタニカルリネン着物(KIMONO MODERN 2016)

「得意なこと」を考えたとき

30代前半、アンティーク着物やカジュアル着物のブームもあり、私の中で再び「普段着きもの」を楽しむ生活が始まりました。

転職のことを考えながら、同年代の人たちと比べて「自分には何ができるのだろう」と改めて考えたとき、真っ先に思い浮かんだのが着物でした。幼い頃から身近にあり、自然と親しんできたものだったからです。

そこでまず、着付け講師の免状取得を目指して着付け教室に通い始め、同時に和裁も学び始めました。さらに、SNSでの情報発信にも積極的に取り組みました。

特に意識していたのは、着物関連のコミュニティに積極的に参加すること。そこで「着物が好き」「着物を仕事にしたい」という思いを、とにかく発信し続けていました。

そんな活動を約2年間続けながら転職の準備を進めていたところ、タイミングよくご縁をいただき、着物屋の販売スタッフ兼・着付け教室の講師として働くことになりました。

2017年テレビの撮影のお手伝い(KIMONO MODERN取材)

着物の仕事の中で見つけたこと

「着物の仕事がしたい」という思いで飛び込んだ業界でしたが、実際に働いてみると、ひと口に着物の仕事といってもさまざまな役割があることを知りました。

着物を作る人、販売する人、着付けをする人、着かたを教える人。
その中で仕事をするうちに、自分の得意なこと、そしてそうではないことにも自然と気づいていきました。

そして私が一番楽しいと感じたのが、「着かたを教える」という仕事でした。

振り返ってみると、以前パソコンのインストラクターをしていた経験もあり、「人に教える」という仕事は自分に合っていたのかもしれません。

この着物屋で働く期間は、自分の中ではある意味「修行」のようなもの。長くても5年ほどで独立することを視野に入れていました。

ところが3年目、社内の部署移動があり、それまで毎日のように着物を着ていた生活から一転、着物を着る機会が大きく減ってしまい、週に1〜2回ほどしか着られない生活が1年ほど続きました。

けれど、この時間があったからこそ、着物の仕事についてゆっくり考えることができたのかもしれません。そして改めて気づいたのは、自分はやはり、着物を着ることそのものが好きなのだということでした。

2018年カーディガンコートを初めて試着した日

着物は、生活を少し豊かにしてくれる

着物が生活の一部になって約30年、日常の中で身近な存在になってからは、20年ほどになります。

着物を頻繁に着るようになり、さらにそれが仕事になってから感じているのは、着物は本当に「楽」なものだということです。

ここでいう「楽」とは、単に着ることが簡単という意味ではありません。

着物を着ているだけで褒めていただくことも多く、自然と立ち居振る舞いも丁寧になります。
そして洋服と比べて流行の変化がゆるやかなので、20年、30年と同じ着物を着続けることもできます。

サイズが合わなくなって処分することも少なく、きちんとメンテナンスをすれば長く付き合うことができる。そう考えると、着物は単なる衣服ではなく、生活の質を少し豊かにしてくれる存在なのかもしれません。

現在は、教室での講師を中心に活動しながら、イベントでの販売サポートや帯結びのデモンストレーションなども行っています。また、自分がこれまで使ってきたアイテムを次の方へつなぐ「お譲り会」として、年に2回フリーマーケットも開催しています。

キモノモダンPOP UP SHOP@福岡での帯結びの公開レッスン

時代の変化とともに、着物に関わる仕事はより身近に

今は毎日着物というわけではありませんが、それでも着物は私の生活に欠かせない存在です。そして気がつけば、それは自然と仕事にもなっていました。

もし、「着物を仕事にしてみたい」と漠然と考えている方がいらっしゃるなら、以前の私のように「どこかに勤める」という選択だけではなく、今はSNSという便利なツールがあり、さまざまな形で関わることができる時代です。

着物の仕事といっても、その関わり方は本当にさまざま。だからこそ、まずは自分で着物を着てみて、「楽しい」「おもしろい」と感じるところから始めてみるのが良いのではないかと思います。

着物はきっと、思っているよりもずっと身近で、そして自分の世界を少し広げてくれる存在です。

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