5月の空模様ー大人の兵児帯誕生秘話、阿波しじらの産地を訪ねて

5月の原宿-OFFICEへ出勤中に見上げた喧騒と青空

みなさん、こんにちは。 Creative Directorのゆきです。

5月になりましたね。 窓を開けると、初夏の風。
なんならちょっと暑いくらい。わたし、この時期の空気ってなんか好き。これから何かがはじまりそうな予感を感じさせてくれる気がして。

今月は、KIMONO MODERNのスタートからずっとある夏の看板商品の物語を、少し掘り下げてみようと思ってます。 「阿波しじら織りの兵児帯」 かれこれ15年(!!)本当に多くの方に愛していただいているロングラン商品の誕生のお話です。

ある着付けの先生との、生地屋巡り

そう。 じつは、この帯が生まれたのは、一人の着付けの先生との会話がきっかけでした。

いつもKIMONO MODERNでコラムを書いてくださってるたなえり先生が、まだ着付け教室をスタートされたばかりの頃。 「ゆきちゃん、お稽古に使える軽い帯、作ってくれない?」 そう声をかけてもらって、2人で生地屋さんを巡ったんです。

程よい薄さ、程よい張り感。
帯だから腰はいる、でも重くなりすぎない。 2人であれこれ触りながら選んで、最終的に辿り着いたのが「しじら織り」という生地でした。

しじら織りは、縦糸と横糸の収縮率の差で、表面に独特のシボ(凹凸)が生まれる織り方。 あの小さなうねうねが、肌に触れる面積を減らしてくれるから、夏でもさらっと気持ちいい。 でもその当時、帯ってある程度の「厚み」があるのが一般的だったので、この薄さは果たしてありなのか???というのが悩ましいとこでしたが、パリッと形がキマル、ほどよいハリ感があった。

「これだね」と2人でうなずいた。

まずはサンプルを作って撮影をして。少量で発表 してみたら・・・・びっくりするくらい飛ぶように売れた笑 生産が追いつかないほどで。当時はなかった「薄さ」「軽さ」「兵児帯」は子供の帯、という常識を覆す「大人の兵児帯」というカタチ。「たなえり好み」というネーミングでスタートしたあの日。

きっとみんなも求めてた「こんなの欲しかった」なんだろうな、と。嬉しい大ヒットでした。

「2000メートルからです」と言われた日

ところが、数年経った頃。その生地が手に入らなくなってしまいました。

発注しようとしたら「できますけど、2000メートルからです」と言われて。 (当時の私には天文学的な数字だった・・・・笑) どうしよう、あの帯が続けられなくなるかもしれない。

本当に悩んだのを覚えています。
この生地はメーカーさんが広幅で洋服用にと中国で生産されていたものだったのですが、そんなに沢山・・・売れるとはいえ、どんだけ・・・と、のけぞりそうになったのをよく覚えてます。

でも、まてよ。しじら、しじら、しじら・・・
そこでふと思い立ったのが、「そうだ、本場に行こう」ということで。 思い立ったが吉日、向かったのは徳島県。

そう、阿波しじらの「阿波」は徳島の旧国名。しじら織りは徳島で生まれた、れっきとした伝統工芸品なんです。産地に行けば、本物と直接つながれる。そう思って。

本場「阿波しじら」を訪ねて、徳島へ。

そこで出会ったのが、織元が長尾織物さん。 糸の染めから織りまで、すべてを一貫して手がける工場で、お客様向けに直接販売もされています。

奥まで続く大きな工場に、ガシャンガシャンという織機の大きな音が体に響いてきて。 「ここで生まれているんだ」と実感する。

やっぱり産地を訪れると、その場の空気が伝わってくるんですよね。 作り手の声や人柄に触れることで、良い関係が築ける。 工場で働く方々の姿を見ることで、思いと背景が伝わってくる。 だからこそ大事にしたいし、繋ぎ続けたいと思う。 そして彼らの作り出す伝統工芸が、これからも続いていくように。KIMONO MODERNを通してお客様に知っていただく、そんな努力をしなきゃいけないなぁと、産地を訪れるたびに気持ちを新たにします。

ひとつ正直に言うと、日本製に切り替えた時、すこし不安があった。 品質も手触りも上がったけど、帯としての張り感は少し変わった。上質になったがために、ハリ感が落ちた笑 良し悪しなんですけど。前はいい意味でその「粗雑さ」がプラスに変わってたんですよね。

でも今となっては、むしろこの質感の方がいい。
ほどよいハリ感、洗うほどに馴染んでくるような風合い。パリッとした感じがお好みなら糊付けしてお洗濯すればパリッとした感じも蘇る。柔らかいから初心者でも結びやすいし、2本使いにしてボリュームを出す楽しみもできる。 お子さんとの色違いコーデも可愛い。

巡り巡って産地のものづくりに還元できるようになった。遠回りが、正解だったんだなぁと思っています。

悩ましいのは色だし-伝統と洗練のはざまで。

しじら織りで一番難しいのは「色出し」
縦糸と横糸に違う色を組み合わせて、ひとつの色を表現する。 染め本を見ながら頭を悩ませて、「こう出るはず」と思っても思い通りにならなくて。 「本当はもう少しこういう色にしたい・・・え。できない?もっと薄くなっちゃいます??うーーん・・・」の、繰り返し。

イメージに近い2色を掛け合わせると遠くにいっちゃうし、「それはないでしょwww」というようなギョッとした色を掛け合わせると、妙にイメージに近くなる。職人さんとのやりとりには私には太刀打ちできない、長年の経験と技術がある。貴重なアドバイスをいただきながら、脳みそを妄想で爆発させながら色を捻り出してゆく。

そうして試行錯誤を経て生まれたKIMONO MODERNの「大人の兵児帯」の、新シリーズCOLOREDやBICOLOR。 夏の夜にしっとり馴染む色ばかりなのは、私の中での「こんなのあったらいいな」と職人さんの精緻のコミュニケーションの結晶なのです。

「帯は洗えない」を覆す、「洗える帯」を作りたかった

たなえり先生からの提案が、作るきっかけにはなったのですが。もうひとつ、 この帯には「帯は洗ってはいけない」という着物業界の常識を打ち破りたいという気持ちがありました。

夏に汗をかいた帯を、そのままにしておかなきゃいけないなんて不衛生だし、気持ちよくない。 「洗えない」ということが、夏の着物のハードルをどれだけ上げていることか。

だから洗える帯を、と。

しじら織り特有のシボのおかげで乾きも早いし、清潔に保てる。 しかも5000円前後で日本の伝統工芸品が楽しめる。 (これはKIMONO MODERNの、地味だけど本気の企業努力です・笑→ちょっと最近厳しいけど・・・)

本格派なのに、背伸びしないお値段で買える。
着物をはじめたい方の、最初の1本にもなれる。
そんな帯を作りたかったし、今もそのつもりで作り続けています。

「お小遣いの範囲で着物を楽しんでほしい」
というのは、KIMONO MODERNがカリフォルニアで生まれた頃から変わらない気持ちで。 20年経っても、その思いは変わらず、この帯にも宿っています。

みなさんのクローゼットに、阿波しじら織りの兵児帯1本、ありますか? 夏着物と一緒に、今年もぜひ傍に置いてもらえると嬉しいです。

▼ 2026年5月31日まで
「阿波しじらの兵児帯を買うと、レースの三連仮紐プレゼント」キャンペーン実施中