#1 はじまりの場所 – “着物を日常に”という夢の原点
1年前の、2024年。
KIMONO MODERNは、私がまだアメリカに住んでいて、観覧車を見上げながら娘の手を引き、「ここから何かを始めよう」とブログを立ち上げてから、ちょうど20年を迎えました。

あの頃は、まさかいまKIMONO MODERNがこんなにも長く続き、普段着のキモノブランドとしてこんなにも沢山のお客様に愛される存在になろうとは想像すらしていませんでした。でも振り返ってみると、この20年は“伝統と今をつなぐ旅”だったように思います。
ちょっと今日はそんなアメリカ時代から、KIMONO MODERNの歩みを改めて振り返ってみたいと思っています。
目次

アメリカで芽生えた想い ― 遠い国へのラブレターのように
アメリカで過ごした2000年代、
自由なファッションやカルチャーに触れる中で、「日本人としての感性」や「美意識の根っこ」を見つめ直すようになりました。毎日着物生活の母親と日本舞踊や邦楽が子守唄のように当たり前の日常だった和の世界が、あまりに退屈で息苦しくて海外に出たかったはずなのに、異国の地で初めてその美しさや特別ななにか、に気づき、創作活動のエネルギーになっていました。
きっと、寂しかったんでしょうね。
祖国との繋がりを絶やさないようにするかのように、そして自分らしさを紡いでいくように、ものづくりに没頭していたような気がします。

帰国、自由と楽しさを紡いだアトリエ時代。
2010年、日本へ帰国。
翌年、福岡に1軒の日本家屋を借りて自宅兼のアトリエを構えました。大きな縁側に日差しがやわらかく差し込む、まるで時間がゆっくり流れるような家でした。

実はこのアトリエにはモデルがあります。
それは、かつて脚光を浴びた東京・目白の「花想蓉」。目白駅から10分ほど歩いた住宅街に佇む、カフェ兼着物屋さん。
わざわざ着物を“買いに行く”のではなく、たまたま素敵なカフェに立ち寄ったらたまたま着物やさんで、それがとても素敵でみたいな。その軽やかさと文化の香りが共存する空間と、偶然出会ってしまった!みたいな演出に感銘を受け、「いつかこんな場所を作りたい」とな、思いました。
とはいえ、当時子供もまだ小さく、スタッフも1-2名で気ままに暮らしたかった私は、不定期でのアトリエ解放、というスタイルで遊ぶことになります。

DIYのお店にいって工事用のライトを購入してお庭をライトアップしてみたり、縁側でアコーディオンの演奏会を開いたり、お手製ドリンクバーを出したりして、アメリカでは叶わなかった“リアルでつながる喜び”を感じながら、お客様と「楽しいこと」「ワクワクすること」を共有する時間が流れていました。

大濠公園のそばへ ― はじめての小さなお店
やがてWEBショップも軌道にのり、商品や在庫も少しずつ増えていく中で、アトリエでは仕事が追いつかなくなっていきました。
そこで移転したのが、福岡・大濠公園のすぐそば。KIMONO MODERN初の小さな店舗兼事務所でした。大濠公園まで徒歩5分、鳥飼八幡宮のすぐ裏手にある、元々は陶器屋さんを営まれていたお店跡に入居しました。

時間に縛られるのが苦手な私は、最初は「お店を開ける」ことに抵抗もありました。それでも「実物を見てみたい」というお客さまの声に背中を押され、週末だけの営業をスタート。
「やっと実物を見られてうれしいです」と言ってくださる時間は、何よりも励みで、ブランドが“リアルに息づく瞬間”でもありました。
そして、GUIDE SHOPという次のステップへ

この大濠公園のお店での時間は、KIMONO MODERNにとって大切な“人との出会い”と“信頼の積み重ね”の時期でした。ちょうどこの頃、今は亡き、吉澤暁子着付け教室の吉澤先生のお声かけをきっかけに、阪急百貨店での催事をスタート。これを皮切りに、百貨店さまからのお声かけをいただくようになり、福岡の木の葉モールなど、福岡以外のお客様にも会いにいくようにもなりました。
けれど、商品が増えるにつれ、少しずつ店舗が在庫に飲み込まれていきました。入荷のタイミングで商品がスペースを圧迫し、店舗スペースが半分以下になったり、段ボールの上で書類を書くような毎日。裏手に撮影と在庫スペース確保のためにもう1軒事務所を借りたりもしていましたが(不動産好きの私は、こういう居場所があることも一つの楽しみではあったのですが)
それでも「まだまだ全然大丈夫」と思っていた私に、当時のスタッフがぽつりと「ゆきさん・・・狭いです。しごと、できません・・・」と言ったのです。

彼女はとても我慢強い人でした。
だからこそ、その一言が胸に響きました。
「これは本気で次を考えないといけない」と思った瞬間でした。
もう少し広い場所を──
それが、のちにKIMONO MODERNの新しい拠点となるGuide Shop構想へとつながっていきます。
着物をもっと自由に、もっと身近に。
次回は、そんな想いから生まれた「Guide Shop」が教えてくれたことをお届けします。











