着物ルールと現実のギャップ-卒入学式のママ着物を考える。

デニム着物は卒入学式に着てもOKか?

この季節になると、「デニム着物や木綿のレース着物を子供の卒業式や入学式に着たい」というお客様からのご相談を多くいただきます。

そしてもちろん、全力で止めています!笑

卒業式や入学式は、公的なセレモニーなので「普段」ではなく「ハレ」

なので、普段着に値する着物をおすすめすることはできませんし、着物に厳しい方が居合わせた時に嫌な思いをされないよう、「一般的な」ルールに則ったお着物やスタイルをご案内するのですが、

「そこまで格式ばった式ではないから」

「いわゆる’フォーマル’な着物よりオシャレに着たい」

「フォーマルを揃える予算がない」

など、お客様の状況や事情はさまざま。いわゆる「着物ルール」通りの着物を着てしまうと、かえって一人だけ浮いてしまうような気持ちがしたり、そこまでの高級感を求めているわけでもない、というお話も多々耳にするのです。

ハレの日にも着物を着たい、

という想いと、現実のギャップはとても大きいなと。そしてそれこそが、着物離れや敷居の高さを生み出しているのではないかとも感じています。

フォーマルと多様化するニーズ。

フォーマルはお相手があってこそ。

結婚式、卒入学式、etc。それは洋服でも着物でも変わりません。しかし最近では同じ結婚式であっても、親族なのか、友人だけのささやかなパーティーなのか、お立場はひとそれぞれです。結婚するお相手のお家のお家柄のご希望などもあるでしょう。

卒業式や入学式も、着物を着ているだけでかなり他所行きな感じで洋服よりよっぽどランクが上、と思われている地域もあれば、きっちり「こういう着物でなければ恥ずかしい」という地域もあるようです。

お子さんの年齢や、学校の校風によることもあるでしょう。

着物のルールってそもそも何なんだろう。

ですが、

「訪問着を着ていないから、式を敬っていない」

「袋帯じゃないから常識はずれ」

なんて目で見られてしまうのでしょうか?もし、そうであったらますます着物を着ることが怖くなってしまいますよね。

そもそもレース素材は、ヨーロッパではフォーマルの扱い(木綿はさすがにNGだと思いますが)そして、写真の帯も仕様的には八寸名古屋なのでカテゴリとしてはカジュアルの部類に入るのでしょうが、

エレガントな柄や色使い、光沢。世界最高品質の絹糸を使った帯であることから、トータルで判断して堅苦しくないフォーマル、セミフォーマルくらいの格式でも大丈夫、とメーカーさんからもお話しを伺っております。

振袖のルールにしても昭和からはじまり、呉服業界の商習慣から発生したものです。逆にいうとわかりにくく高価な着物を浸透させるためには、制服と同じで「結婚式にはこういう着物」「振袖はこういうもの」と型を作ることによって、分かりにくさを解消し販売しやすくした側面もあるのではないかとも感じています。

また話は少しフォーマルから逸れますが、気候も文化も昔とはだいぶ、様変わりしてきています。季節のややこしい着物ルールも沢山ありますが、着物は「着る・もの」なので、普段着に関してはその時のお天気に合わせたものを着用してもいいのではないかとも思っています。

少しでも、着物がより多くの人のの身近に感じられるようになれば。

KIMONO MODERNで販売している「DRESSY着物」シリーズは、光沢のある上品な総レースのお着物。艶やかで高級感のある、ちょっとリッチな生地を使用して、無地キモノのようなスタイルでお楽しみいただけるようにと製作いたしました。もちろん、正式なフォーマルのルールの基準に沿わないことは重々承知しております。

ですがガチガチのフォーマルではなく、キレイめワンピースの延長として。

ルールはルールで分かっているけれども、それよりはオシャレな着物を着たい、せっかくの機会だから着物を着たいけれど予算がない、など様々な事情でフォーマル着物をハードル高く思っていらっしゃるお客さまのために手の届きやすい価格で、そして合わせる帯を格上げすることで、セミフォーマルな装いとしてお召いただけるのではないかとKIMONO MODERNではご提案をしています。

ルールから極端に逸脱することなく、文化を紡いでいきたい。

様々なご意見もたくさんあるでしょうし、色々と難しい部分はあるかとは思います。ダメなものをよいと言ったり、嘘をついたり騙したり、そういうことでは断じてありません。

ですが、あえて。あくまでもルールはわかった上で、現代のニーズに合わせたKIMONO MODERNからのご提案です。そしてそれをよしとするかどうかはお客様のご判断、そして着物を着ていく場所やお相手次第なのかなと考えています。

ルールを極端に逸脱することなく、少しでも着物がより多くの人のの身近に感じられるように努めていきたいと思っております。(KIMONO MODERN 代表取締役 濱田友紀子)