[番外編]モノづくりの現場「天然灰汁発酵建て」藍染工房レポート

こんにちは。KIMONOMODERNライターの林です。今回は、愛知県常滑市の藍染工房見学レポートをお届けします!

ご縁で繋がる、モノづくりの現場

愛知県常滑市にある「nuu」は、KIMONOMODERNのFLAG SHOPとして提携をしている、古民家カフェ&和裁教室。KIMONOMODERN商品のお取り扱いもあり、2025年6月にはPOPUPイベントも開催しました。

元々藍染が好きで、その奥深さと「生きる染物」という藍染の世界に惹かれ、恋焦がれていた林。

nuuのオーナー久美子さんから、「nuuとコラボで着物を作った藍染工房があるよ」とご縁を繋いでいただき、常滑で藍染工房を営まれている「紺屋のナミホさん」へお邪魔しました。

生きる染物「天然灰汁発酵建て」のリアル

ナミホさんは有松にほど近い場所で生まれ育ち、勤めていた会社を離れて4年ほど修行を重ねてから、独立。

天然の原料のみを使った「天然灰汁発酵建て(てんねんあくはっこうだて)」で藍染をしている職人さんです。明治から、安価で早く確実に染まる化学染料も登場しましたが、天然の染料は自然やお肌にも優しいんです。

驚くべきことに、ここでは藍の葉の栽培から染料作り、染めまで、藍染に必要な作業の全てを一貫して行なっています。

天然灰汁発酵建ての工程

①藍の葉を育てる

「もはや農家です笑」

初夏に苗の植え付けをし、真夏に葉の収穫を行います。暑さに強くぐんぐん育つ藍は、1回の植え付けで2〜3回刈り取りができるほどすくすく成長するそう。

驚いたのは、藍の花はなんと「赤い」ということ。
(写真:紺屋のナミホさんInstagramより@konya_namiho)

②藍の葉を乾燥させる

写真はごく一部ですが、実際には刈り取った山のような藍の葉をカラカラになるまで乾燥させます。


③「すくも」の仕込み

乾燥させた藍の葉に水と酸素を含ませると、葉の表面にいる菌が反応して発酵が始まり、3ヶ月ほどかけて染料の元となる「すくも」が完成します。

ナミホさんは、藍染の中でこの作業が最も難しいと言います。

ナミホさん「原料は藍の葉と茎だけ。水、酸素、温度の調整だけで、3ヶ月の間、発酵を止めずに反応させ続けさせなければなりません。やっぱり自然のことですし、どの分量で必ずこうなる、というセオリーがないので難しいです。」

「すくもを見て、これが成功、という状態ってわかるんですか?」

ナミホさん「正確には、甕の中で染料を作り染め出してみるまでわかりません笑 すくもがうまくできるかどうかで次の一年の染めが決まるので、今でも染めるまでドキドキです。」

この工程がハードルとなり、天然藍に手を出せずにいる若手の方も多いそう。10月の仕込みの時期にはこのすくも作りを見るためにたくさんの方が見学に来るといいます。

「すくもには神様が宿るから、本当は神棚を置くのが慣わしなんですけど、うちは氏神様のお守りをこうして乗っけてます笑」

2人で膝を抱えながら指先ですくもをいじる時間・・・とても穏やかで癒されました。


④染料の仕込み(藍建て)

すくもを藍甕(あいがめ)に入れ、灰汁(あく)、石灰、ふすま、日本酒などを加えて微生物の力で還元させ、染料を作ります。すくも作りと同様に、藍建ても自然の変化に合わせて常に手をかけ、調整していく大変難しい工程です。

上の写真は、左が建てて10ヶ月の染料、右が建てて1週間の生まれたてホヤホヤの元気な染料。同じ時間だけ染めた生地を比較してみると・・・

建てて1週間の藍は、鮮やかな藍色にキレイに染まりました!

「1回でこんなに綺麗に染まるんですね。10回20回と染めるイメージでした。」

ナミホさん「右の方も、昨日までは1回でももっと濃く染まってましたね。昨日1日で頑張ってたくさん染めたので、それだけかなり薄くなります。」

ちなみに10ヶ月の染料はこの日で役目を終え、土に戻すことになっていたそう。地球に優しく循環できるのも、天然染料の天然灰汁発酵建てならではですね。

モノづくりの街、常滑。材料は「ピザ屋」で調達?!

常滑は元々、焼き物が盛んな街。至る所に、当時の大きな登窯が立ち並びます。

そんな土地柄、今でも焼き物以外にも様々なモノづくりや地域活動を行う方が多く、クリエイターがのびのびとモノづくりができる環境なのだそう。

今回、ナミホさんが常滑をぐるっと一日案内してくださったのですが(本当にありがとうございます!)、焼き物屋さん、カレー屋さんとチャイ屋さんをされているご夫婦、手作りビーガンメニューや手作り小物を作られているカフェなど・・・様々な方に出会い、皆さんが「自分の好き!」「誰かのためにできること」を大切にされていることを感じました。

藍建てに使う材料の数々

そこで驚いたのが、藍染に必要な材料の調達ルート。

前章の工程でもご紹介した通り、染料を作るためにはたくさんの材料が必要です。中には「どこで手に入るの・・・?」というような聞き馴染みのないものも。

そんな中「うちは近所のピザ屋さんからいただいてますよ」とナミホさん。

「・・・ピザ屋・・・・?」

よく聞くと、藍建に「木炭」が必要なため、窯焼きピザ屋さんで「捨てられるはずだった」木の灰を譲っていただいているんだとか。他にも、

小麦の殻:知り合いの小麦農家さん

貝灰:牡蠣などを出している日本料理屋さん

(しかも貝殻は、焼き物の登窯が稼働するときに一緒に焼いてもらっている)

木灰:ピザ屋さん

このように、材料の多くを地域の輪の中で手に入れて、助け合っている。
捨てられるはずだったものが、新たなモノづくりに生きている。
困った時にはお互い様。人が人の縁を繋げていく。

そんな、常滑ならではの地域性を強く感じられたエピソードでした。

最後に

「生きる染物」と言われるほど様々な要因で常に変化する染料。それらを見極め、染料作りから染めまで、細やかに手をかけ対応する職人。また環境に優しく、大切な人のお肌に触れても安心の天然100%である、天然灰汁発酵建ての本当の価値や奥深い美しさを実感することができました。

地域に愛される「紺屋のナミホ」さんは、WEBショップやPOPUPにて、天然灰汁発酵建の藍で染めたファッションアイテムの販売やワークショップなどを行なっています。

常滑に行かれる際はぜひ、KIMONOMODERNの商品が見れる「nuu」そして「紺屋のナミホ」さんに足を運んでみてはいかがでしょうか?

お世話になったナミホさん。お忙しい中お時間をいただきありがとうございました!

紺屋のナミホ

〒479-0822
愛知県常滑市奥条3-200裏[MAP]

WEBサイト:https://konya-namiho.studio.site/

フォトギャラリー

2階のスペースにはカフェが。藍甕を見下ろしながら一息。
素敵なスタイリングが人気のmamiさんによるレンタル着物スペース。
なんとKIMONOMODERNのアイテムを使ってくださったこともあるとか!
手入れされ整理された道具に、職人さんの真の美しさを感じます。